前回に続き、明晰夢を見る方法を紹介します。新しく考案されたものや古来からの方法を見直したものなど20個ありますが、なかには初心者でも高い確率で明晰夢を見れるようになる方法もあります。
あまり日本では紹介されていませんが、試してみる価値があると思われます。
近年、明晰夢の研究で目覚ましい活躍をしているのが、英国のダニエル・ラヴ（1976～）です。
彼は、いくつも明晰夢の手法を開発していて、初心者でも効果の高いものになっています。
彼こそがスタンフォード大学のスティーブン・ラバージ博士（1947～）の後継者といって良いと思います。
明晰夢を見る36の方法 その２
では、残りの20の方法を「あいうえお順、ABC順」で紹介します。
17.アンカー・テクニック
アンカー・テクニックは、明晰夢関連の著作を多数出しているダニエル・ラヴによって提唱されています。
人は、激しい嵐の夜には明晰夢を自然に見やすくなるそうです。他にも波の音や気を散らすような騒音なども明晰夢と関連づけられています。音が繰り返される不慣れな環境では、眠りに落ちた瞬間に明晰夢を見やすくなるようです。
こうした現象を利用するのがアンカーテクニックです。
ボーカルなしのリラックスできる音楽をループ再生し、それに意識を置いて寝ます。
明晰夢を見るのは
・眠りに落ちた瞬間（WILD）
・夢を見始めたとき（DILD）
の２回のチャンスがあります。
一度起きて再就寝するときに行うのが、やりやすいと思われます。
音楽やサウンドは、色々と試してみましょう。夢の内容に影響するようなものを探すのが良いと思われます。
ダニエル・ラヴは、この方法を発展させて、扁桃体刺激テクニックも提唱しています。
18.オートサジェスチョン（自己暗示）
前の記事中の「８.ポール・トーリーの複合法」でも紹介している自己暗示（自己催眠）です。
寝る時に、自分に「私は今夜明晰夢を見る」と繰り返し言い聞かせながら、眠りに入るものです。
ポール・トーリーに限らず、明晰夢の先駆者は自己暗示を明晰夢の手法として取り入れています。
「夢学(ユメオロジー)―創造的な夢の見方と活用法」「夢クリニック-夢を実生活に活用する」などで知られるパトリシア・ガーフィールドは、「自己暗示によって、週に3回まで明晰夢を見る頻度を増やすことができた」と語っています。
スティーヴン・ラバージも、初期の段階では、自己暗示に重きを置いています。
しかし、現在では、自己暗示は明晰夢を見る努力を続けるモチベーションを保つのには役立つが、明晰夢を誘発すること自体にはあまり効果がないという意見が多いようです。
自己暗示は、あくまで他の方法と組み合わせて補助的に使うのが良いです。
19.カウンティング・テクニック
この方法は、スティーヴン・ラバージ博士が紹介しています。
カウンティング・テクニックは、数を数えることで意識を保とうとするものです。
単独で使うものはなく、WILD法やWBTB法などメインの明晰夢誘導手法のなかで使います。
例えば、WILD法で「わたしは自分が夢を見ていると気づく」と唱えながら眠ろうとしても、すぐに深い眠りになっている場合は
「１-わたしは自分が夢を見ていると気づく」
「２-わたしは自分が夢を見ていると気づく」
「３-わたしは自分が夢を見ていると気づく」
と数えるようにします。
20.サイクル・アジャストメント・テクニック
明晰夢は早朝のレム睡眠中に見やすいことがわかっています。
サイクル・アジャストメント・テクニック（CAT）は睡眠サイクルを調整して、早朝にいちばん見やすい状態を作り出すための方法です。
やり方は、
１.最初の１週間は、通常より90分早く目を覚ますように目覚まし時計をセットして起きるようにして、体内時計を調整します。
２.次の1週間は、起床時間を、通常時間と90分早い時間を毎日変えていきます。
たとえば、いつも6時半に起きているのなら、6時半 → 5時 → 6時半 → 5時 というようにします。
すると、通常の起床時間のときに明晰夢を見ることになります。
この方法はダニエル・ラヴが開発したもので、初心者に効果的で、実験では学生10人中8人が平均2回明晰夢を見ることができたそうです。
21.ジャーニー・テクニック
ジャーニー・テクニックは、聴覚優位より視覚優位の人に適した方法です。
またマインドフルネスのテクニックに慣れている人に合っています。
先ず、ジャーニー（旅）を設定します。ジャーニー（旅）といっても、通勤・通学コースだったり、散歩や近所の店への買い物コース、犬の散歩コースなどよく慣れている移動コースにします。
日中、設定したコースに意識を集中して歩いてみます。途中で5か所のポイントを選んで、しっかり形や色、匂いなどを観察します。ポイントの例としては、樹木、草花、建造物、標識などで、人工物と自然物どちらも含まれていた方が良いです。
夜中に目覚めたら、日中のジャーニーを頭の中で再現しながら、また眠ります。
眠りに落ちたときに明晰夢を見やすくなります（WILD）。
が、うまく見えなくても、夢を見始めたときにも明晰夢を見るチャンスになります（DILD)）。
22.ドリームウォーカー・テクニック
ドリームウォーカー・テクニックは、上のジャーニー・テクニックとよく似ています。
が、場所は家の中になって、選ぶのはベッドから約20歩離れた部屋となります。
おすすめは家のトイレです。リアリティチェックのため、トイレにはデジタル置時計を置くのが良いです。（夢の中では時計の数字が歪んで見えます）
昼間にベッドからトイレまで歩くことを実際にやってみて、イメージできるようにしておきます、
夜中に目覚めたら、トイレまでの小さな散歩を頭の中で再現しながら、また眠ります。
23.ドリーム・ステイバライゼーション
ドリーム・ステイバライゼーション（夢の安定化）は、明晰夢を長く見るための方法です。
明晰夢をはじめて見る人は、明晰夢がほんの短い時間で終わってしまいがちです。
明晰夢を見るのに多大な努力をしたのに、すぐに終わってしまうことに失望した人は少なくありません。
そのため夢の中に留まるための方法がネット上で議論されています。
その内容をまとめると、夢を続けるためには、夢の中でじっとしていないことが重要だ、ということです。
なかでも「夢の中でぐるぐる回る」ことが人気です。他にも、踊ったり、歌ったり、叫んだりするのも良いとされています。他には、「夢の中で目を素早く動かす」という方法もあります。
24.ドリーム・ナレーション・テクニック
ドリーム・ナレーション・テクニックは、明晰夢研究者のダニエル・ラヴによって考案された方法です。
夢の内容を言語化することで、脳の複数の領域が活性化されるので、集中力が高まり、夢をより明晰にして、安定的に明晰夢を見れるようになったり、夢をコントロールする効果があります。
ダニエル・ラヴのメッセージ（弊訳）
私はこの方法が最も強力なやり方だと考えています。 実際、私はすべての明晰夢をナレーションで語り、それを40年間続けてきました。これが明晰夢の中のデフォルトの行動になるはずです。 中途半端な明晰夢、（夢の中の）貧弱な論理展開、、および夢の安定性に悩んでいる場合、ドリーム・ナレーション・テクニックがこれらの問題を解決する唯一の最も強力なテクニックです。
しかし、見ている夢の内容にナレーションするには、先ず明晰夢を見れるようになる必要があります。
この方法は、明晰夢を深化させるにはたいへん適していますが、明晰夢を見るために他の方法が必要です。
25.ドロッピング・テクニック
ドロッピング・テクニックは、明晰夢を見るテクニックの中でも、もっとも古い方法の１つです。
やり方は、石や金属製の重いものを手に持って、ベッドの端の上に置きながら眠りにつきます。
眠りに入ると、筋肉が緩んで、持っていたものを下に落としてしまいます。
その瞬間に音がして、少し覚醒して、明晰夢を見やすくなります。
目が覚めた場合は、また重いものを持って、繰り返します。
最初の眠りでは効果が薄い（音がしても眠ってしまう）ので、夜中に目覚めたときや昼寝の際に使用します。また、下の床を傷つけないように金属製の板を置く等の工夫が必要です。
発明家エジソンや画家のダリも、同様の方法で創造のアイデアを得ていたことが有名ですが、彼らはスプーンやボールを使っていました。明晰夢に関する文献では、重いものとなっていますが、あまり重いものでなくとも、スプーンなどでも十分ではないかと思います。
26.ブレイキング・ザ・サークル
ヨガにムードラという手のポーズがあります。日本語では「手印」、忍者が忍術を使うときの手のポーズがイメージしやすいでしょう。ムードラはチャクラを刺激してエネルギー（プラナ）の流れを良くするとされています。
ブレイキング・ザ・サークルでは、左右の親指と人差し指で円を作る「ギャンムードラのポーズ」を使います。ギャンムードラは、知識や知恵のムードラとされて、意識を明晰に保つ効果があります。
やり方は、次の通りです。
昼間は、頭が冴えている状態でギャンムードラのポーズをします。疲れてきて意識が薄れたり、他のことに考えが彷徨っていると感じたら、親指と人差し指を離します。こうしてなるべく長い時間、ギャンムードラが続くように練習します。
夜は、一度眠って目が覚めてから、ギャンムードラのポーズをしながら眠りに入ります。
このとき昼間と同様に、集中できないときは親指と人差し指を離すようにして下さい。親指と人差し指で円を作ったまま眠れば、明晰夢を誘発する可能性が高まります。
この方法は、ダニエル・ラヴによって開発されました。
27.扁桃体刺激テクニック
扁桃体刺激テクニックは、まだ実験的なアプローチで、効果の有無はわかっていません。アンカー・テクニックを発展させたものだと考えられます。
私たちの脳は、自己防衛のため、睡眠中にも潜在的な危険に対して警戒しています。
誰かが歩いてくる音、ドアを開ける音、ささやき声、爆発音などは危険を知らせるものとして、脳は反応します。
脳の深部にあるアーモンド形の扁桃体は、私たちの情動に関わっている部位で、こうした脳の反応における重要な役割を担っています。
この方法は、睡眠中に（弱く）警戒を煽るような光や音を与えて、偏桃体を刺激することで、明晰夢を見やすくしようというものです。
28.ラヴ・メソッド
ラヴ・メソッドは明晰夢の研究家ダニエル・ラヴが何十年にもわたって自身で使用し成功率が高い、と言っている方法です。
従来の明晰夢の方法は、睡眠の最後のレム睡眠段階で見ようとするものでしたが、ラヴ・メソッドは「2 番目のレム睡眠で明晰夢を誘発する」ための方法です。
たとえ失敗しても、次のレム睡眠でもチャンスがあるわけで、成功率は２倍になるというわけです。
やり方は
１.目覚ましを2時間半後に設定して寝る
２.2時間半後に目を覚ましたら 10分間起きる
この10分間では、
- リアリティ・テスト
- 立ち上がる
- 深呼吸をしながら明晰夢を見る自分をイメージ 15回
を行います。
３.10分後再び寝る
下でで述べる 34.IMP法などを行いながら寝ます。
この方法では設定した2時間半後が、睡眠サイクルに合っているかが問題になります。
目を覚ましたときに意識がハッキリしていなかったら、前後にずらして時間を調整してみて下さい。
29.ALDIT法
「高度な明晰夢誘導テクニック：Advanced Lucid Dream Induction Technique (ALDIT)」法は、夢研究者のG.スコット・スパロウによってまとめれた方法です。
このブログで紹介しているいくつかの方法を複合したものですが、薬やサプリの使用を含んでいるため、お勧めはできません。
１.睡眠（４時間）
２.覚醒
３.瞑想
４.夢の追体験
５.再入眠
の順で行います。
30.ADA法
「終日意識： All Day Awareness (ADA)法」は、ネーミングは新しいですが、おそらく古代からの明晰夢の方法だったと考えられます。
ADA法では、現在の瞬間の自分の体の感覚を感じ、見えている景色、微妙な音、匂い、触覚、さらに自分の思考を細部にわたって観察し続けます。
このようにマインドフルネスを常に実践することで、夢の中でも同様に、細部にわたって観察できるようになると考えられているようです。
個人的には、それだけでは明晰夢を見るのは難しいので、他の瞑想と同じく、明晰夢を見るためのトレーニングと考えてやってみるのが良いと思います。
31.DEILD法
「夢から抜け出した状態から誘発された明晰夢：Dream Exit Induced Lucid Dream （DEILD）」法は、レム睡眠中に夢を見ている状態から目を覚ました時に、再度夢に入って明晰夢を見ようとするものです。
明晰夢は、通常の夢見状態（レム睡眠）と覚醒の中間と考えられますので、このアプローチには説得力があると思います。
しかし、この方法はネット上で発展したもので、やり方に曖昧な点や誤りもあります。
基本的には、レム睡眠から目を覚ました時にあらかじめ決めておいた内容をビジュアライゼーション（視覚化）を行います。
たとえば、思い出の場所を歩いたり、馴染みの場所で踊ったり、好きな人と話したりなど、想像しやすいシーンや動作が良いです。
こうして再び眠りに入るときに、視覚化した内容やその続きが、明晰夢となって現れるのを待ちます。
32.DJRT法
「夢日記リフレクション・テクニック：Dream Journal Reflection Technique (DJRT)」法は、明晰夢を見るための基本的な能力を高めるための方法と言って良いです。
DJRT法は、夢日記をつけ、振り返り（リフレクション）を徹底して行います。
夢日記は、朝起きたら思い出す限りできるだけ詳細に、設定、登場人物、感情、考え方、出来事などの夢の内容を記録します。
振り返り（リフレクション）は、見た夢の内容をできるだけ長い時間振り返ります。矛盾しているところや論理的でないところ、現実では起こりえない奇妙な出来事など、自分が夢を見ていることに気づくべきだった点を評価してください。
そうした反省のうえにたって、リアリティテストを設定します。
夜寝る前には、振り返った夢の内容と反省をもとに、同じ夢を見たときのメンタルリハーサルを実施します。当然リハーサルの中では、リアリティテストまで行います。
以上を続けることで、夢を認識する能力が飛躍的に高まります。
33.FILD法
「指で誘発される明晰夢 Finger Induced Lucid Dream (FILD)」法は、ネット上の明晰夢コミュニティ内で発展したものです。
発明者Hagarts に因んで「HILD」法と呼ばれる場合もあります。
この方法は、再就寝法（WBTB法）と組み合わて行うのに適しています。
やり方は、就寝して４～５時間後に目が覚めたら、
１.人差し指と中指をピアノを叩くように上下に動かす。時間は30秒。ただし、脳が起きてしまうので、数えたりはしない。
感覚で30秒くらいで大丈夫。
２.約30秒後、指で鼻をつまむ。これはリアリティテストになっていて、息ができれば夢の中にいることになります。
息ができなければ、まだ起きていることになります。
３.息ができなければ、手を戻して、しばらくしてからまた１と２を行います。
これを指や腕が疲れるまで（または飽きるまで）繰り返します。
FILD法は、ネット上では効果があると良い評価を受けています。
34.IMP法
「不可能な動作練習：Impossible Movement Practice (IMP)」法は、再就寝法（WBTB法）と組み合わせて行われるもので、覚醒から眠りに落ちたときに明晰夢を見る（WILD）ように考えられています。
やり方は、再就寝でベッドに戻ったときに、ふつうは仰向けに寝ますが、その姿勢ではできない身体の動作をイメージします。
例えば、
・頭の下に手を開いた状態で入れて寝ている姿勢で、拳を握る動作
・仰向けのまま背中を手で掻く動作
・布団に手を入れたまま耳を触る動作
などです。
考えられる動作は沢山ありますが、手や指の動作が容易で、初心者にはお勧めです。
こうしたイメージを繰り返し続けていると、眠りに落ちたときに想像上のことが現実に起こったような感覚を体験するので、これが明晰夢に繋がっていくことになります。
IMP法は、ダニエル・ラヴによって提唱されています。
35.SPILD法
睡眠中の金縛り（睡眠麻痺）は、意識があるのに体を動かせなくなる現象ですが、明晰夢や体外離脱体験とも関連があると考えられています。違いは、金縛りのときは幻覚など自分の意思でコントロールできないのに、明晰夢では制御できることにあります。
「金縛りから誘発される明晰夢：Sleep Paralysis Induced Lucid Dream (SPILD)」法は、金縛りが起こったときに、あわてずそのままリラックスして再び眠りに入ることで、明晰夢を誘発するものです。
金縛りがよく起きる人は、覚えておくと良いでしょう。
36.VILD法
「明晰夢の視覚的誘発：Visual Induction of Lucid Dreaming (VILD)」法 は、MILD法を少し改良したものです。
FILD法と同様に、ネット上の明晰夢コミュニティLD4ALL 内で発展してきました。
MILD法では、前に見た夢の記憶を使用しますが、VILD法では、事前に準備された想像上の夢の内容を使用します。
夢はリアリティ・テストを含んだものにするのが良いです。
例）
私は自分の部屋に立っています。
そこに友人Ａが私に、リアリティ・テストとは何かを教えてほしいと頼んできました。
私はデジタル時計を見るリアリティ・テストを教えて、数字が歪んでいるので、夢を見ていると伝えました。
私はドアに向かいました。友人Ａと外に出て歩き始めました。
（実際にはもっと詳しい夢の設定が必要です）
夜中に目を覚ましてから再び眠るまで、この描いたシーンを繰り返しイメージします。
ただし、筆者がコミュニティ内で見た限りでは、成功率はそれほど高くないようです。
事前に準備する夢の内容に問題があるのかもしれません。
起きているときにしっかり設定した夢の内容を何度も繰り返しリハーサルするのが成功の秘訣かと思います。
明晰夢を見る36の方法 まとめ
いかがですか、明晰夢を見るのに沢山のテクニックが開発されていることに驚いた方もいると思います。
繰り返しますが、大事なことは
・自分に合った方法を探す
・いくつかの方法を組み合わせる
ことです。
筆者の個人的には、20.サイクル・アジャストメント・テクニックと １.MILD法や６.SSILD法 などを組み合わせたものがお勧めです。（補助的に 17.アンカーテクニックや9.明晰夢誘導マスクを取り入れてもＯＫ）
あなたも明晰夢がうまく見れますように！
