明晰夢を見る方法は沢山あります。私が数えてみたら40を超える数の方法がありました。
そのなかから、危険な方法や効果がないことが明らかな方法を除いて、36の方法を紹介させて頂きます。
明晰夢を見る36の方法 その1
なぜ沢山の方法があるのか …… 答えはカンタンです。完全な方法はないからです。
体外離脱テクニックの制作者ウィリアム・ブールマンは、40年以上の経験のなかで体外離脱誘導のためのベストの方法は人によって異なることを強調しています。明晰夢についても同じことが言えます。
また、シンプルな方法については、いくつかの方法を組み合わせることも考えた方が良いです。
実際に、臨床試験で「まったくの初心者20人中8人が2晩で明晰夢を見た方法」も、MILD法を修正したものとWBTB法とRTとを組合せたものだったようです。
では、明晰夢を見る36の方法を見ていきましょう。
このうち1から16までは代表的な方法で、2と3を除いて、大学の臨床試験でも使用されたことがあり、中国の大学で有効性の評価も行われています。
1.MILD法
「記憶による明晰夢誘導:Mnemonic Induction of Lucid Dreams(MILD)」法は、スティーヴン・ラバージが「明晰夢―夢見の技法」という本で教えている有名な方法です。
臨床試験でももっとも多く試され、8回使用されてうち6回で有効だとされています。
明晰夢の方法をコーホート(症例)研究した深圳大学の報告でももっとも推奨している方法です。
しかし、最近明晰夢関連の著作を多く出しているダニエル・ラヴは、MILD法の効果は、効いたり効かなかったりする=散発的だとあまり評価していません。
また注意すべきは、いま色んなサイトや書籍やセミナー等でMILD法として教えられているものが、オリジナルのシンプルな原則を無視して、方法が省略されたり変更されたり、余分な動作を追加していると指摘されていることです。
(1.MILD法から4.リアリティテストまでのやり方は 弊記事「明晰夢の方法」 で紹介しています。
説明不足ですので、追って詳しく書き直します)
2.WBTB法
「再就寝:Wake Back To Bed(WBTB)」法は、眠ってから数時間後に起きて、20分から1時間ほど起きたままでいて、また寝るものです。再就寝の際には、前の夢を思い出しながら、夢の中の自分をイメージしながら寝ます。
究極の明晰夢マニュアル(The Ultimate Lucid Dreaming Manual)の著者マーク・ヴァンデケーレが開発したとされています。
WBTB法は有名ではありますが、明晰夢の科学的なアプローチの方法とはなっていません。当時20歳のヴァンデケーレがブログで発表したのものが、ネットを通じて広がっただけものだと評価されているからです。
また、一度寝て起きた時にしっかり覚醒することを要件とするので、健康面でも警鐘を鳴らす意見もあります。
しかし、他の方法と組み合わせやすい点から根強い人気があります。
3.WILD法
「覚醒から誘導された明晰夢:Wake-Induced Lucid Dream(WILD)」法は、起きている状態から眠りに落ちた、そのときに明晰夢を見ようとする手法です。
仰向けに寝て、リラックスしながら「わたしは自分が夢を見ていると気づく」と唱えながら、眠りに落ちるようにします。
WILD法はシンプルですが、単独では習得するのは困難とされていて、WBTB法と同じく、臨床試験では採用されていません。
ただし、中級者以上になると他の方法よりWILD法がやりやすくなるようです。
4.RT(リアリティ・テスト)
リアリティ・テスト(RT)は、夢を見ているのか、起きているのかを確認するために行う簡単なテストです。リアリティ・チェックとも呼ばれています。代表的なものは、手のひらに「A」の文字を書くものですが、他にも、鼻をつまんでみる(夢の中では息ができる)、デジタル時計や文字を見る(夢の中では字や数字が歪んで見える)などのやり方があります。
リアリティ・テストは明晰夢を見たいと思う人は、身に付けておきたい重要なテクニックです。
が、これだけで明晰夢を見るのは難しいです。
臨床試験では、リアリティ・テストだけでは 3件中0件と効果は認められませんでした。
他のテクニックとの組合せたものでは、3件中1件で、明晰夢を見る確率が大幅上昇しました。
5.夢日記
夢日記(ドリーム・ジャーナル)は、夢を思い出す能力を向上させるためのもので、明晰夢を見るための基本的なエクササイズです。
明晰夢を見たいなら、先ず夢日記をつけるところから始めることが推奨されます。
夢日記は、紙に書くだけでなく、記録を取るものであればなんでも良いと言われています。最近はスマホの録音機能を活用する人が多いです。
ただ、RT(リアリティ・テスト)と同様、夢日記だけで明晰夢を見るのは難しいです。
ある臨床試験では、3週間夢日記をつけても明晰夢を見る頻度は上がりませんでした。
他の臨床試験では、MILD法などど組み合わせて、明晰夢を見る頻度は45%有意に上昇しています。
6.SSILD法
「感覚から誘導された明晰夢:Senses Initiated Lucid Dream(SSILD):法は、いま注目されている明晰夢誘導法です。
複数のテクニックを組み合わせたものということもあって、単独で使用することが推奨されています。
元々は中国の明晰夢研究者「CosmicIron」がブログで発表したものですが、ネットコミュニティ上で大いに盛り上がって、改良が重ねられて、使いやすく成功率の高いものになっています。
SSILD法の核となるのは、「サイクル」と名付けられたエクササイズです。
- 視覚に集中する:目を閉じて、閉じたまぶたの奥の暗闇に集中する
- 聴覚に集中する:周囲の音に集中する
- 触覚に集中する:布団の重さ、触った感じなどに集中する
SSILD法のやり方は
1.眠ってから数時間に起き、5~10分後したら、また横になって「サイクル」を開始します。
寝姿勢は、寝つきの悪い人は寝やすい格好で大丈夫ですが、そうでない人はサイクルの間は眠らないように、ふだんはしない寝姿勢がお勧めです。
2.先ず準備運動として、サイクルをすばやく4回から6回行います。各ステップ数秒で大丈夫です。
3.次にゆっくり3から6回、サイクルを実行します。各ステップは30秒程度はかけましょう。
4.眠りやすい姿勢になって寝ます。
初心者向きで、特別な訓練は不要にもかかわらず、成功率が高いとされ、MILD法に代わるかもしれません。臨床試験では、1件中1件で有効性が確認されています。
7.MBSR法
「マインドフルネスに基いたストレス軽減:Mindfulness-based stress reduction(MBSR)」法は、その名の通り、ストレスや不安を軽減するための瞑想コースです。
瞑想(マインドフルネス)と明晰夢には概念的にも理論的にも関係があると考えて、コース履修者が明晰夢を見るか調査されています。が、瞑想初心者に8週間のMBSRトレーニングを行っても明晰夢を誘発するには至りませんでした。
しかし、長期間瞑想を経験している人は、瞑想初心者に比べて、明晰夢を見る頻度が高いことが発見されました。
瞑想は、明晰夢を見る方法とは言えませんが、夢日記などと同様に、明晰夢を見るための基本的なエクササイズとなるようです。
8.ポール・トーリーの複合法
ポール・トーリー (1937 – 1998) は、明晰夢に関する先駆的な研究を行ったドイツの心理学者です。スティーヴン・ラバージ(1947-)の「夢見の技法」の前に、明晰夢の方法を開発しています。
ポール・トーリーの複合法は、
- リフレクション(内省)
- インテンション(意思)
- オートサジェスチョン(自己暗示)
から成っています。
リフレクションは、リアリティ・チェックの原型となるものです。毎日何度も「今は夢の中か現実か」を自分に問います。
インテンションは、夢の中にいるリハーサルとして、自分自身に重要な質問をします。夢のサインが現れたら、質問ができるように用意するものです。
オートサジェスチョン(自己暗示)は、寝る前に明晰夢を見れると強い確信をもって行います。
2018年の臨床試験では、トーリーの複合法を3 か月間練習することで、明晰夢を見る確率が大幅に上がることが確認されました。(1/1)
9.外部刺激 光
レム睡眠の時間に合わせて、LED光の点滅刺激で明晰夢を誘発させるデバイス(アイマスク)が販売されています。
Amazon.comのレビューを見ますと、評価は極端に分かれているようです。
臨床試験では、2件中1件で明晰夢を誘導する効果がありました。
夢日記やRT法などと組み合わせて使うのが良さそうです。
10.外部刺激 音
レム睡眠中に音の刺激で明晰夢を誘発させようとするものです。
代表的なものはヘミシンク DVD「明晰夢」(廃盤)です。
(DVDですが、音声ガイドです。8時間のエクササイズが含まれているため、DVDになっています)
臨床試験では、3件中1件で明晰夢を誘導する効果がありました。
11.外部刺激 匂い
レム睡眠中に匂いの刺激で明晰夢を誘発させようとするものです。
臨床試験は1件ありますが、明晰夢を誘導する効果は認められませんでした。
12.外部刺激 タッチ
レム睡眠中に触覚刺激(タッチ)で明晰夢を誘発させようとするものです。
臨床試験は1件ありますが、明晰夢を誘導する効果は認められませんでした。
13.経頭蓋交流刺激 (tACS)
脳に弱い交流電流を流して、明晰夢を誘発できるかという実験が、2013年に行われています。
明晰夢を誘導する効果は認められませんでした。
14.経頭蓋直流刺激 (tDCS)
脳に弱い直流電流を流して、明晰夢を誘発できるかという実験が、2013年に行われています。
明晰夢を誘導する効果は認められませんでした。
15.アルファGPC(非推奨)
明晰夢目的でのサプリメントの使用については、弊サイトではお勧めしておりません。あくまで知識として情報を提供するものです。
アセチルコリンは、神経刺激を伝える神経伝達物質で、思考の明晰さや記憶力に関わっています。
ふつう睡眠中はアセチルコリンのレベルが低下し、思考や記憶が曖昧になります。
そこで、睡眠中にもアセチルコリンのレベルを高めれば、明晰夢を見るようになるのではと考えられています。
アルファGPC(L-α-グリセリルホスホリルコリン)は、アセチルコリンの前駆体(化学反応などである物質が生成される前の段階にある物質)で、記憶力や学習能力を高める効果をうたって、サプリメントも販売されています。
しかしながら、臨床試験で1度試されましたが有効性は確認できませんでした。
16.認知症薬 ガランタミン(使用してはいけない)
明晰夢目的での使用については、弊サイトではお勧めしておりません。あくまで知識として情報を提供するものです。
アルファGPCの項で述べたように、神経伝達物質アセチルコリンのレベルを高めれば、明晰夢を見る可能性が高まると考えられています。
そこで、脳内のアセチルコリンの量を増やす作用のある認知症の薬が明晰夢に効果があるのでは、と考えられました。
スティーヴン・ラバージは、2018年 認知症薬の1つ ガランタミンで実験を行い、明晰夢を見る確率が2.3倍~4.5倍になったと報告しています。
なお、同じ作用のあるフペルジンAは、米国ではサプリ扱いのため、入手のしやすさから試す人が多いですが、ネット上の評価は効果がなかったというものが殆どです。
参考文献:
はじめての明晰夢 夢をデザインする心理学 (松田英子:著) Amazon広告
明晰夢を見る方法のまとめ
以上、先ずは明晰夢に誘導する方法のうち、よく知られている16の方法を概説しました。
よく知られているのは、1.MILD法ですが、近年は6.SSILD法に期待が高まっています。
ヘミシンクでもSSILD法による明晰夢CD(英語版)を出しています。日本語版が待たれますね。
明晰夢の方法はこれに限りません。次回は 20個の方法を紹介します。
新しいために臨床的な評価はされていませんが、ネット上などでは効果が高いと評されているものも多いので、期待して頂ければと思います。